研究概要 |
当研究室独自に構築した未利用天然物ライブラリーを用いて,主に癌に関連するシグナル伝達分子であるTRAILおよびWntシグナル等を標的とした天然物の探索を行った. 1.デス受容体の一つとしてDR5(=TRAIL-R2)に着目し,タイ産Millettia brandisiana(マメ科)について,DR5誘導作用をもつ活性成分の探索を行った.その結果本植物より新規イソフラボノイドbrandisianin A-Fを含む11種の化合物を単離した.これらのうち,brandisianin Dが17.5μMでコントロールに比べて2.4倍のDR5プロモーター活性を上昇させることが判明した.またTRAIL耐性AGS細胞に対してTRAILとbrandisianin Dの併用処理により有意に細胞生存率が減少させた.この結果から,brandisianin DはDR5の発現誘導を介してTRAIL感受性を増強させたものと示唆された. 2.Wntシグナル伝達経路における転写因子TCFの転写活性化を抑制する天然物に着目し,タイ産Eleutherine palmifolia(アヤメ科)について活性成分の探索を行った.TCF転写阻害活性は,TCF結合領域を有するルシフェラーゼレポータープラスミドを安定導入した293T/STF細胞株によるアッセイシステムを用いた.本植物のメタノール抽出物について,活性試験を指標とした分画を行い,10種の化合物を単離した.これらの化合物のうち3種は新規ナフトキノン配糖体であり,Eleutherinoside A,B,及びCと命名しそれぞれ構造を決定した.これらの化合物は顕著なTCF転写阻害活性を有していた.
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