研究概要 |
刺胞動物のアナサンゴモドキ類は,日本では奄美大島以南,沖縄諸島などに生息している.これらはいずれも強い刺胞毒を有しており接触により激しい刺傷症状をもたらすことからfire coral,火炎サンゴとも呼ばれている.今までに,イタアナサンゴモドキ類から溶血活性タンパク質の単離が報告されているものの、刺傷被害を引き起こす原因毒の化学的性状に関してはいまだ不明な状況である.そこで,今回沖縄で採取した細枝状のアナサンゴモドキのタンパク質毒素の性状解明を目的として研究を行った. 冷凍アナサンゴモドキから刺胞を取り出す際に、共生藻の存在が邪魔をした。しかし、各種刺胞単離法を検討した結果、処理する溶媒や遠心分離法などを工夫することにより、刺胞のみの単離に成功した。また、刺胞からの極めて効率のよい粗毒抽出法も見出すことができた。予備実験の結果、その粗毒溶液中には溶血活性や細胞毒性などさまざまな活性を示す複数のタンパク質性の化合物が存在することが明らかとなった。 まず、溶血活1生を示すタンパク質毒素の精製に着手した。各種クロマトグラフィーなどを用いて精製条件の検討を行い、最終的に分子量約10万のタンパク質を溶血活性を保持したまま単離することに成功した。ペプチドフラグメントを行った結果、一断片の配列のみを決定することができたが、その配列は既知のタンパク質とは相同性を示さず、新規な活性タンパク質であることが示された。 また、細胞毒性を示すタンパク質毒素についても精製を行った。各種クロマトグラフィーなどを行った結果、分子量約2万のタンパク質が細胞毒性物質として単離された。現在、ペプチドマッピングを行い、複数のペプチド断片について配列の解析が終了し、詳細な全遺伝子の配列解析を行っている。この細胞毒性物質についても新規なタンパク質であることが判明した。
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