研究課題/領域番号 |
18032038
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
小鹿 一 名古屋大学, 本学院生命農学研究科, 教授 (50152492)
|
研究分担者 |
内田 浩二 名古屋大学, 大学院生命農学研究科, 助教授 (40203533)
間宮 隆吉 名城大学, 薬学部, 助手 (70340297)
|
キーワード | 海洋天然物 / 生体分子 / 脳神経疾患 / 生理活性 / 薬理学 |
研究概要 |
神経疾患治療薬のシーズ開拓を目的として、ラット由来PC12細胞に神経成長因子(NGF)様の突起伸長作用を示す物質の探索を行った結果、沖縄で駆除の対象になっているオニヒトデから活性を示す新規ステロイド配糖体Acanthasteroside類を発見した。 これらの中で最も高い活性を示したacanthasteroside B3の突起伸張活性の作用機構を調べた。まず、シグナル伝達経路上の各酵素の特異的阻害剤を用いた化学遺伝学的実験により、NGF受容体TrkAの活性化は必要ではなく、PI3キナーゼ、MEK(ERKキナーゼ)、p38 MAPキナーゼの活性化を通して突起伸張を誘導していることがわかった。中でもp38 MAPKの活性化が突起伸張に最も重要と考えられた。次に、シグナル伝達酵素の活性化をWestern blot法により調べた結果、TrkAのリン酸化は起こらず、MEK-ERK経路、PI3K-Akt経路、p38 MAPキナーゼのリン酸化が観測された。活性化が顕著なp38 MAPKの上流ではCdc42が活性化(GTP型)されていた。 NGF様神経突起伸長活性を示すacanthasteroside B3が個体レベルで記憶や学習に何らかの効果を示すかどうかを、加齢マウス(約10ヶ月齢)を用いて評価した結果、Y迷路、新規物質認知テスト、受動的回避試験において一定の効果が見られた。さらに、老化促進モデルマウスSAMをもちいて同様の記憶学習実験を行った結果、同様の記憶改善効果が見られた。以上のことから、オニヒトデの神経突起伸長活性ステロイド配糖体は、神経疾患治療薬のシーズとして有望であることが判った。
|