研究概要 |
日本人の死因の第一位を占めるだけでなく、世界的にも増加の一途を辿っているがんの克服を目指す研究は、極めて重要である。我々は、興味深い構造を有する生理活性天然物をモチーフとして利用する有機化学的アプローチによって、がん克服に資するべく研究を行い、平成19年度に以下の成果を得た。 1.がんの増殖を促進するといわれる転写因子Hypoxia Inducible Factor-1α(HIF-1α)の強力な阻害作用をもつTHFリグナン類の基本合成法の確立、並びに、そのプローブ化を目指した研究を展開し、コアとなる2,5-ジアリールTHF骨格の立体選択的合成に成功した。 2.チロシンキナーゼ阻害活性を有する10員環クラビラクトンDの全合成研究を行い、Nozaki-Hiyama-Kishi反応を鍵反応として基本骨格となるflavidulol骨格を構築することに成功した。 3.興味深い抗腫瘍活性を有するアセトゲニン類をリードとする新規抗がん剤の開発研究として、例を見ない含フッ素アセトゲニン類の合成に着手し、既存のアセトゲニン類の2級水酸基をフッ素に置換した新規含フッ素アセトゲニンの合成に成功した。また,合成した含フッ素アセトゲニン類のがん細胞パネル試験による評価を行ったところ,リードとした天然物に比べて特定のがん細胞に対する活性が選択的に増強されるという興味深い結果を得た.
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