地球温暖化、グローバル化に伴う、新興・再興ウイルス感染症の頻発が大きな社会問題となっている。この中には、最近注目を集めているトリインフルエンザウイルスやSARS-CoVなどがある。ウイルスは生物と無生物の境界領域に存在するものであり、比較的単純かつウイルス間で相同性の高い分子システムを利用した、増殖、感染などのライフサイクルを形成している。このような普遍性の高い分子システムを標的とする抗ウイルス剤の開発戦略の創製は、新種ウイルスに対する防御体制を確立する上で、緊急性の高い課題である。抗HIV-1剤開発研究の一環として、ウイルスが標的細胞に感染する際の膜融合を阻害するペプチド性化合物の創製研究を手がけてきた。HIV-1は、I型膜融合タンパク質を有するウイルスであり、このタンパク質のHR2領域由来配列に抗ウイルス作用があることに着目し、α-helix性HR2領域由来ペプチドの機能面区別化という概念を用い、極めて強力な抗HIV-1ペプチドの開発を行ってきた。天然由来の配列では34残基以下のペプチドにすると活性が極端に低下した。しかしながら機能面区別化概念を用い合成したペプチドは28残基に低分子化しても活性低下が認められず、初めて低分子化に成功した。さらにEE-KK配列を利用した機能面区別化を行ってきたが、他の非天然型アミノ酸の導入によっても区別化が可能であり、活性低下がさほど認められないとの知見を得た。
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