研究課題
私は標的遺伝子との2本鎖内で特異的に活性化され、反応性官能基のマスキング剤に使ったスルフィド基で結合した分子が放出され、選択的なシチジンに対するクロスリンク反応を開発している。本研究ではこの一連の反応を利用して、癌細胞で過剰発現している遺伝子に対してハイブリッドを形成しその発現を阻害すると同時に、薬剤を放出することで標的タンパクの機能を制御する、マルチ制御機能によりシグナル伝達をコントロールできる機能性分子の開発を目的とした。昨年度、標的遺伝子に対してハイブリツドを形成し、薬物が放出されるのを細胞外から検出する方法として、FRET現象を利用し、薬物の放出を蛍光の増強で確認する方法を検討した。その結果、消光団としてダブシル基、蛍光団としてフルオレセインを持つダブル標識機能性オリゴDNAが、試験管内で標的位置にシトシンを含む相補的配列のオリゴDNAに対してのみ、選択的に消光剤の脱離に伴い蛍光が増強することを明らかにした。本年度はダブル標識機能性オリゴDNAをいくつかのドラッグデリバリーシステムを用いて細胞内への適用に関する検討を行った。その結果、北大の原島教授のグループが開発された機能性リポソームにより100nMという非常に薄い濃度でも蛍光標識オリゴDNAが細胞内へ輸送されることを蛍光で確認した。同様の濃度のダブル標識機能性オリゴDNAを細胞に投与したところ、標的遺伝子を持つ細胞でのみ蛍光の増大がみられ、標的遺伝子のない細胞ではこの蛍光の増大は観測されなかった。この結果は、標的遺伝子依存的にダブシル基の脱離が進行したことを示唆する結果であると考えており、今回合成したダブル標識オリゴDNAを用いて、細胞内においてハイブリッド形成により選択的に進行する化学反応を、蛍光の増強により観測できると期待されるとともに、これらの化学反応が薬物放出システムとしても細胞内で機能する可能性を示したものであると考えている。
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