研究概要 |
先に,我々はオキシム類のN-0結合がPd(0)錯体への酸化的付加によって切断され,アルキリデンアミノパラジウム(II)種を与えることを明らかにしている。オキシムとヒドラゾニウム塩との類似性に着目し,ヒドラゾニウム塩とPd(0)との反応についての検討を行った結果,ヒドラゾニウム塩のN-N結合がPd(0)錯体への酸化的付加によって切断されることを見出した。さらに,γ,δ-不飽和ケトンのヒドラゾニウム塩にPd(0)触媒を作用させると分子内Heck型反応が進行し,ピロールを合成することができた。 BF_4^-を対アニオンとするγ,δ-不飽和ケトンのN, N, N-トリメチルヒドラゾニウム塩に,ジメチルホルムアミド中,10mol%のテトラキストリフェニルホスフィンパラジウムを80℃で作用させるとピロールが得られた。本反応では,ヒドラゾニウム塩の酸化的付加によりトリメチルアミンが生じるため,通常のHeck反応のような塩基の添加は必要としない。また,対アニオンの効果は顕著であり,ヨウ化物イオンが対アニオンの場合は反応速度は低下し,ピロールの収率も低い。これは,中間のアルキリデンアミノパラジウム種がカチオン錯体の場合,オレフィン部への付加が速いことを示すものである。 さらに,ヒドラゾニウム塩と有機金属種とののカップリングについて検討を行った。銅塩存在下,ヒドラゾニウム塩がアリールボロン酸とカップリングすることを見出し,新しいアニリンの合成法を開発した。
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