特異骨格生物活性物質であるシオマイシンAとメチルサルコフイトエートの全合成を達成した。 ペプチド性チオストレプトン系抗生物質シオマイシンAは、極めて複雑な構造をもつ天然有機化合物である。シオマイシンAを5つのグメント、A、B、C、D、E、に分け、まずそれらを合成し、次いでそれらを順次連結させ、さらに2度の環化反応により全合成を達成した。 ビスセンブラノイド類は、軟体サンゴから2 2種類単離された希少構造天然物であり、2つのセンブラノイド(14員環化合物)の分子間Diels-Alder反応で生合成されたと考えられるユニークな海洋天然有機化合物である。このビスセンブラノイド類の1つであるメチルサルコフイトエートを、生合成仮説と同じ分子間Diels-Alder反応を利用して全合成した。まず、親ジェン部分に相当するメチルサルコエートをジチアンカップリング、小杉-右田-Stilleカップリング、閉環メタセシスを鍵反応として合成した。次いで、ジェン部分を不斉エポキシ化、選択的ジヒドロピラン環構築を鍵反応として合成した。最後にこれらの分子間Diels-Alder反応により、メチルサルコフイトエートの全合成を達成した。 これら2つの天然有機化合物の効率的な全合成を達成したことは、生体機能分子の創製分野に大いに貢献するものと考えられる。
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