抗生物質ツベラクトマイシン類の効率的合成法の開発に関しては、ツベラクトマシンBおよびEの初の全合成を達成した。以前完成していたツベラクトマイシンAおよびEの全合成の際採用したルートを部分的に修飾し、両抗生物質の上部セグメントと下部セグメントを各々合成し、それらをStilleカップリング引き続く向山マクロラクトン化にて結合し、ツベラクトマイシンBおよびDの効率的合成法を確立した。この結果、不明であったそれら抗生物質の立体化学が決定できた。 一方、分子内檜山カップリング、または閉環メタセシスを鍵として24員環ラクトン構造を有する中間体を合成し、それらを基質とする渡環Diels-Aider反応によるツペラクトマイシンAとEの形式合成も達成した。 GKK1032類の合成に関しては、酵素分割による光学活性合成中間体の大量合成、および分子内Diels-Alder(IMDA)反応を経るA/B/C環部の立体選択的な構築に成功していた。そこで、B環に存在する水酸基とジョードベンゼンとの銅触媒/塩基条件下でのUllmann型反応によるアリールエーテル部構築を検討し、効率的な条件を見いだした。また、C環上に存在するアルデヒド基と、別途合成したγ-酸素官能基化されたピロリジノン誘導体とのアルドール反応による連結にも成功した。この結果、GKK1032類を構成する全炭素原子を備えた鍵中間体の効率よい合成ルートを開発した。 スピキュロ酸A合成に関しては、既知のキラルアルデヒドより出発し、炭素伸長を経て合成したビニルボロン酸誘導体と、別途合成した三置換ヨードオレフィン体との鈴木-宮浦カップリングにて、ジェン部/ジェノフィル部を備えたIMDA反応基質の合成法を確立した。期待したとおり、IMDA反応は立体選択的に進行し、スピキュロ酸Aの二環性骨格の構築に成功し、現在は最終段階であるスチリル側鎖部の導入を検討している。
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