研究概要 |
本年度は、含窒素生理活性物質、特にα-アミノ酸合成に有用な反応開発を行った。 我々は、分子内にオレフィンを有するO-シリルオキシムをBF_3・OEt_2で処理すると新規な活性種N-ボラノニトロンが発生して、分子内のオレフィン部分と1,3-双極子環化付加反応を起こし、分子内環化付加体を与えることを見出している。この分子内反応を分子間に拡張した。まず、ベンズアルデヒドO-シリルオキシムとスチレンとをBF_3・OEt_2存在下で反応させたところ、反応は24時間を必用とし、40%の収率で分子間付加体を与えた。分子内環化付加反応を検討していたときにN-ボラノニトロンは求電子的であるという知見を得ていた。そこで、この知見とα-アミノ酸合成への有用性を考慮して、電子求引基としてエステルを有するエチルグリオキレート由来のO-シリルオキシムを合成し、BF_3・OEt_2存在下でスチレンとの反応を行った。その結果、発生するN-ボラノ-C-エトシキシカルボニルニトロン(1)の反応活性は高く、反応は2時間で終了して71%の収率で目的とする分子間環化付加体を与えた。ニトロン1はスチレンとだけでなく脂肪族の末端アルケン、1,1-二置換アルケン、三置換アルケンとも1,3-双極子環化付加反応を起こして収率よく分子間環化付加体を与えた。ニトロン1はスチレンの様な電子豊富なアルケンとは容易に反応するが、高度に電子不足のアルケンとは反応しない。例えば、多くの1,3-双極子と環化付加反応を起こすN-メチルマレイミドとは全く反応しない。次にα-メチルアクリル酸エチルエステルとの反応を試みた。このアルケンは電子求引基であるエステルを有するにもかかわらず、メチル基の電子供与性で反応が進行し、対応する環化付加体を収率よく与えた。本反応は、γ-置換グルタミン酸類の合成への応用が期待できる。
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