研究概要 |
エナンチオ選択的な非対称化を基軸とした光学活性炭素環状化合物の構築法の開発と,本反応を鍵反応としたpachyclavulide Bの不斉全合成研究について検討を行った.Pachyclavulide Bは最近,沖縄近海産軟体サンゴより我々が単離したブリアラン型ジテルペノイドで生理活性が期待される化合物である.このものの6員環部位の立体選択的構築にすでに成功しているが,問題がある以下の2点について今回検討を行った.まず,合成途中のラジカル環化反応による四級炭素の構築における問題点の解決について検討した.ラジカル環化反応による収率と選択性の向上を目指し,原子移動型反応等種々の検討を行ったが,良好な結果は現在のところ得られていない.今後さらに他の反応による効率的な四級炭素構築法について検討を行っていく.もう一点の問題点として,エナンチオ選択的な非対称化に用いる触媒の触媒効率がある.水酸基等の官能基を近傍に持たない炭素-炭素二重結合の不斉エポキシ化のための触媒として,Shiらが開発した不斉触媒が頻繁に用いられているが触媒効率に問題がある.この触媒効率を向上させた触媒が開発出来れば有用な新規不斉触媒となると考えられる.今回,触媒効率の向上を目的とし,新規な光学活性ケトン触媒のデザインを行った.現在,光学活性ケトンの短工程で効率的,かつ安価な合成法の開発を目指して検討を行っている。一方,すでに開発したエナンチオグループ選択的不斉エポキシ化によって得られる光学活性炭素環状化合物は,種々の天然有機化合物合成に有用な合成素子である.今回,この光学活性炭素環状化合物を用い,他の天然有機化合物の全合成研究にも着手しているところである.
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