研究概要 |
生理活性アルカロイドの代表的なものにイソキノリンアルカロイドがある。さらにこのアルカロイド群には、アポルフィンアルカロイドの前駆体であるプロアポルフィンや新規骨格を有するアンノスクワリンさらにはモルフィナンジエノンなど、基本骨格としてシクロヘキサジエノン構造やスピロシクロヘキサジエノン構造を持つものが知られている。これら化合物の合成に関して、従来はファリシアン化カリウムや二酸化マンガンを用いたフェノールオキシデーション或いは光反応などが主に用いられていたが、収率や工程数の面で改善の余地が残されていた。今年度はこれらアルカロイドの短工程かつ一般的合成法の確立を目指し、試薬の特性を活用するということから、超原子価ヨウ素試薬を用いた新規炭素-炭素結合形成反応を基盤とするスピロシクロヘキサジエノン構造の効率的合成法の開発を検討した。すなわち、エナミドとフェノールの酸化反応を鍵反応として超原子価ヨウ素試薬を用いたところ、期待した炭素-炭素結合が効率良く形成されることが判明した。本反応を応用してプロアポルフィンアルカロイドであるステファリンやプロヌシフェリンの合成に成功し、また、特異な構造を有するアンノスクワリンの最初の合成をも達成することが出来た。一方、ルテニウムカルベン錯体の特性を利用した閉環メタセシス反応を鍵反応として、血糖降下作用を有することから民間薬として用いられているピロリチジニル-α,β-不飽和γ-ラクトン構造を有するパンダマリラクトニンの合成をも検討した。本合成においては対応するテトラエン化合物の閉環メタセシス反応により、2つの連続する複素5員環化合物を一工程で構築することが可能になった。
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