研究概要 |
ガンビエロールは,食中毒シガテラの原因である有毒渦鞭毛Gambierdiscus toxicusの培養藻体から単離構造決定された海洋産ポリ環状エーテル化合物であり、マウスに対する最小致死毒性はMLD_<50>50μg/kgで強い神経毒作用を示す。最近,ガンビエロールがブレベトキシンの電位依存性ナトリウムチャネルヨへの結合を弱いながら競争阻害することも明らかにされるなど,その活性発現機構の解明に関心が持たれている。しかし,天然からは極微量しか得られないことや渦鞭毛藻の培養生産性が遅いことから,天然物による構造活性相関研究を行うことは困難な状況にある。そのため,化学合成による類縁体も含めた試料の供給が望まれている。このような背景のもと、ポリ環状エーテル神経毒ガンビエロールの合成研究を実施した。 ガンビエロールは8環性(ABCDEFGH環)のポリ環状エーテルである。昨年度の研究においてガンビエロールの左半分に相当するABCDフラグメントをD→C→B→A環の順に環を伸長させるルートにより合成した。しかし、CD環部分の合成に22工程を要したことから、本年度の研究ではより効率的なCD環構築ルートの開発を行った。その結果、D環をエポキシスルホンから発生させたオキシラニルアニオンを用いて合成したのち、ヨウ化サマリウムを用いるラジカル環化反応によってC環を構築する合成方法を確立し、15工程でCD環を合成することができた。次いで、CD環フラグメントへのB環の構築は、ビニルエポキシドへの水酸基の6-エンド閉環反応を用いて行い、次いで、ジチアンとエポキシドのカップリング反応、ヒドロキシケトンの還元的エーテル化反応などを行ってA環を構築した。本合成法によりガンビエロールのABCD環フラグメントのグラムスケールでの合成法を確立することができた。
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