本研究の目的は、癌細胞に対してマイクロモル以下の濃度で顕著な細胞毒性を有するマクロライド化合物(-)-dactylolideおよび(-)-zampamolideの全合成を達成することである。 (1)(-)-DactylolideのC11-C15部分のテトラヒドロピラン環をO-マイケル反応を用いて合成を行うことが出来た。すなわち、この環化反応では酸性条件ではアリルカチオンを経由する目的外の反応が起こった。これに対して塩基性条件下では原料のアルケン部分が異性化しジエニルエステルを副生成物として与えた。一方、テトラヒドロピラン環形成の立体選択性に関しては速度論的生成物であるトランス体が主生成物として得られた。温度を上げた条件では熱力学的生成物であるシス体が増加したが、収率が低下しジエニルエステル体が増加した。精査した結果、最適条件はトルエン中0.1等量のLiHMDSを塩基にリガンドとしてTMEDAを用いた条件を見つけ出し、収率94%でシス:とランス比2:1で目的物を得る事が出来た。 (2)これを用いてヒドロキシアルデヒドへ導き、カルボキシ基をもつβ-ケトホスフォネーと縮合させ2段階でセコ酸を68%の収率で得た。この方法は通常のアプローチに比較して保護脱保護の工程を一挙に数段階短縮でき、今後新規セコ酸合成の方法として有用であろう。 (3)得られたセコ酸を山口マクロラクトン化法による閉環を行い、続いて、末端エーテルを脱保護し、アルコールをアルデヒドに酸化することより(-)-dactylolideの合成を完成した。
|