研究概要 |
ラット胎仔大脳皮質由来の初代神経培養系に対して神経細胞の生存保護および神経突起伸展の促進できる神経栄養因子様活性を有する低分子天然物質として,ホーノキ,サンゴジュ,シキミ科植物と南米産Aristolochia arucuataからホーノキオール,メリラクトンA,ネオビブサニンとタアルミデインを見いだしている。これら四種の活性化合物は同神経培養系において神経栄養因子作用のプロフィルが大きく異なることから,これらの神経栄養因子活性発現に関与する作用機序解明は,難治性神経変性疾患の治療と予薬物開発に重要な指針を与えるはずである。本年度研究では,ホーノキオールが活性発現に関与する神経細胞内の標的分子の単離同定するために,蛍光プローブ化、ビオチン誘導体化および光アフィニティーラベル化の誘導体合成を検討し、蛍光プローブ化に成功し、神経細胞内に取り込まれることを確認した。メリラクトンAの全合成は順調に進み、パラジウム触媒反応を活用することでメリラクトンAの全ての環構築法を確立した。ネオビブサニンの合成に関しては、連続Tuji-Trost反応を適用する基本骨格合成に成功した。さらに、不斉マイケル反応を利用した不斉四級中心構築法も確立できたので、それらを基盤とするネオビブサニンの不斉合成に取りかかった。Evansの不斉アルドール縮合ならびに立体選択的ヒドロボレーションによるタアルミデインの不斉合成に成功し,現在、この手法を適用することで連続する4個の立体化学を作り分け,得られた誘導体と活性の関係を検討している。また、シキミ、生薬石菖根から神経栄養因子様活性を示す天然物をあらたに見いだした。
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