研究課題
剛直な構造をもち、空間的に大きく広がったテトラフェニルフェニル基を有する配位子を合成し、その配位子が、つくり出す配位環境、配位空間を触媒反応に生かすことを目標とした。具体的には、大きな不斉空間の構築を行い、不斉加水分解反応、加アルコール分解反応など生体触媒が得意とする反応を中心に利用を図る。酵素加水分解などの生体触媒反応では、不斉点と反応点がかなり離れている基質でも、見事に立体が制御されている例が多数ある。一方、有機金属化学者が発展させてきた分子触媒は比較的小さい分子で構成されており、不斉点と反応点が同一である基質、または近い位置にある基質ではかなりの実績や成功例があるが、生体触媒のように基質分子全体の形を認識することはできていない。応募者は、当該領域の主力研究者が扱っている分子よりは小さいが、通常の分子触媒よりは大きい数ナノメートル程度の分子触媒を扱い、配位空間、特に不斉配位空間を構築する研究を行った。実際には、成果として軸不斉ビフェノール化合物、2,2'-ジヒドロキシ-1,1'-ビアリール類のビニルエーテルの不斉加アルコール分解について検討し、テトラフェニルフェニル基を有するジアミン配位子が、有していない配位子に比べて、選択性で約1.3倍、反応性で約2倍向上させる効果があることを見出した。この研究をさらに展開し、ホスホリル基やスルポキシル基を有する軸不斉化合物の速度論的光学分割を行った。続いてこの反応を応用して、リン原子上にキラリティーを有する化合物の不斉合成、速度論的光学分割を行った。また、アズラクトン類の不斉加アルコール分解反応を検討し、0次反応の速度論的光学分割が1次反応の場合より分割の効率が高くなることを見出した。
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