研究課題
外部因子を用いた構造および機能に対する摂動を加えることによって、協同的で動的な機能の多段階制御の実現が可能な配位空間の創出を行うことを目的に研究を行った。末端にビピリジンを有するトリポダンド1は前年度の検討から、正八面体型の鉄-ビピリジン錯体部をもつ擬クリプタンド型アニオンレセプターとなり、高いレドックス応答性を示すことが明らかとなっている。本年度は、発光性など多様な機能が期待できる1のRu(II)錯体を合成し、その機能を検討した。1とRuCl_3を反応させ、続いてAgPF_6を作用させると1・Ru(II)・(PF_6)_2が32%の収率で得られた。この錯体はDMF中でルテニウムトリスビピリジン錯体に特徴的なMLCT吸収を451nmにもち、609nmの発光をもつことがわかった。またその空孔にはハロゲン化物イオン、特に塩化物イオンを包接することが、NMRによる検討から支持された。さらに、X線結晶構造解析によって、塩素イオンが尿素部位との水素結合によって取り込まれていることが明らかとなった。Fe錯体の場合と同じように、このRu錯体も可逆なレドックス応答性を示し、塩化物イオンの取り込みが錯体部の電荷によって大きく変化することがわかった。例えば、1・Ru(II)を一電子還元すると会合定数は10分の1に、これをまた一電子還元するとさらに6分の1となり、アニオンと錯体部位の静電的相互作用がこの取り込みに重要な働きをしていることがわかった。またFe錯体では分解が起こる酢酸アニオンに対してもこのRu錯体は認識能を持つことが明らかとなった。ハロゲン化物アニオンの添加は1・Ru(II)の発光強度を増大させることもわかり、発光出力を利用したアニオンのセンシングの可能性も示すことができた。
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