研究概要 |
静電容量の小さい粒径2nm以下の金属ナノ粒子では、室温でのクーロンブロッケード現象が発現するため、ナノ粒子が空間規則配列した一次元・二次元超格子は、単電子トンネル効果を利用したナノ電子デバイスへと展開できる。本研究では、配位子殻の厚さの調整、伝導パスへのπ電子雲の挿入、安定な微細金ナノ粒子の合成、微細金ナノ粒子超格子の大面積化を同時に達成させる手法について検討した。 金ナノ粒子の有機配位子として、2,6-bis(1'-(n-thioalkyl)benzimidazol-2-yl)pyridine(TC_nBIR, n=3,6,8,10,12)の合成に焦点を当てた。微細なTC_nBIP保護金(TC_nBIP-Au)ナノ粒子の合成は、DMF/水混合溶媒中、TC_nBIP存在下、HAuCl_4・4H_2OのNaBH_4還元により行った。得られた粒径2nm前後の単分散TC_nBIP-Auナノ粒子は、アモルファス炭素基板上の自己集合により部分的な六方晶規則化構造を形成した。TC_nBIP-Auナノ粒子(n=3,6,8,10,12)二次元超格子の粒子エッジ間平均距離は、それぞれ1.2、1.6、1.9、2.3、2.5nmであった。いずれの場合も、粒子間距離はTC_nBIP配位子二分子分より1nm程度短く、隣接ナノ粒子上のBIP基(約0.8nm)との重なりを考慮すると理解できる。次に、気水界面に形成した多数の六方晶ドメインを50℃で12時間熱処理し、TC_nBIP配位子問π-π相互作用を弱めナノ粒子の再配列をうながした。得られた膜の大部分が単粒子層からなっており、大きな空隙のない単粒子膜からなる長距離規則化六方晶超格子が形成させることに成功した。芳香性官能基を有する多座配位子を用いることで、配位子殻の厚さ調整、伝導パスへのπ電子雲挿入、安定な微細金ナノ粒子の合成、微細金ナノ粒子超格子の大面積化を同時に達成することができた。 その他、ポルフィリン環を金ナノ粒子表面に平行に配位させた系において、ポルフィリン環-金表面間距離がポルフィリンの電子構造や構造に影響を及ぼすことを明らかにした。
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