研究課題
【CH-π-π相互作用を活用した単核レニウム(I)錯体の物性および光触媒能の制御】リン配位子をビピリジンのシス位に2つ導入することで、配位空間において働く"弱い"相互作用を発現させることに成功し2。特にトリアリールホスフィンを2つ導入した錯体において、錯体の基底状態における物性だけではなく、励起状態における物性・反応性にも大きな影響が観測された。すなわち、配位子間にCH(aryl)-π(pyridyl)-π=(aryl)相互作用を導入すると、錯体の吸収は長波長化するが、発光波長は逆に短波長シフトし、励起寿命は長くなる。その結果、励起状態の酸化還元特性も向上した。配位空間に弱い相互作用を導入することで、同じ割合で消光される錯体でも、約35nm吸収を長波長化させることができる。錯体の光触媒能も、配位空間で働くCH-π-π相互作用を導入することで、大幅に向上することが分かった。トリアリールホスフィンを2つ導入した錯体は、CO2を効率よく還元する光触媒としても働くことが分かった。ところが、CH-π-π花相互作用を持たない錯体は、光触媒特性をほとんど示さないことが分かった。【リング状レニウム(I)多核錯体の発光挙動】我々が発見した新規光配位子交換反応を活用することで、Re(I)錯体が2-10個環状に連結したオリゴマーの系統的合成法を確立した。これらリング状レニウム(I)多核錯体は室温溶液中で発光するが、その強度は、核数と架橋配位子の長さや剛直性に依存して変化した。立体障害のために架橋配位子周りの回転が阻害され、配位子間で働く弱い相互作用が、オリゴマー全体に拡がった構造を取るときに、対応する単核錯体に比べ、数倍の発光効率を示すことが分かった。
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Inorganic Chemistry (in press)