研究概要 |
ボトムアップ的な手法により作成された、今までに無いデザイン及び空間を持つ新物質の原子配列、すなわち構造を明らかにすることは、作成された物質の同定だけでなく、空間形状からポテンシャルなどを議論するうえで最も重要である。配位空間を持つ新物質の構造決定には、単結晶X線構造解析が一般に用いられるが、新物質では単結晶が得られないことも多い。この様な場合でも、粉末試料なら得られることが多いため、粉末試料の構造研究は、空間を持つ物質のScienceにおいて重要な役割を果たすと考えられる。 本研究では、空間を形成するフェロセン-アントラキノン共役接合錯体(1,4-Fc_2Aq)について、SPring-8で得られた粉末回折データを用いた、ゲスト分子の吸着・脱離に伴う構造変化の観測をおこなった。 THF分子をゲストとした場合に、この物質がゲスト分子の吸着・脱離のプロセスでも結晶保っていることがSPring-8における粉末X線回折実験により判明した。このため、In-situの粉末X線回折実験により、吸着・脱離のプロセスを詳細にしらべ、溶媒の脱離温度などを詳細に解明した。この成果は、分子の合成と含めてAngewandte Chemie International Editionに掲載された。 また、2種類の溶媒分子o-CIBzとhexaneを吸着した1,4-Fc_2Aqについて、ゲスト分子の脱離に伴う構造変化をSPring-8における放射光粉末法により調べている。室温(300K)〜360Kにおける粉末回折パターンを測定した。その結果、300K、340K、360Kで全くピーク位置が異をっていることがわかる。解析から360Kですべての溶媒が脱離していることがわかった。また、300Kと340Kでは、どちらも溶媒を取り込んでいるが、構造が結晶系まで含めて異なることもわかった。細かな原子位置の導出を現在進めている。
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