研究課題
我々は酵素活性中心モデルとなる種々の金属チオラート/スルフィドクラスターを人工的に構築し、その性質を明らかにすることによって、生体内酵素の活性部位の機能に迫るべく研究をすすめている。今年度は、二核Niユニットと[4Fe-4S]クラスターが複数のシステインチオラートで連結された構造をもつアセチルCoA合成酵素の活性中心のモデル構築をめざし、複数の金属中心を適切な位置に固定できるような多座硫黄配位子を設計、合成して金属クラスター合成を行った。まず、二核ニッケル部位のモデル錯体の構築を検討した。N2S2配位子をもつ単核ニッケル錯体として既知のNi(dadt^<Et>(H_2dadt^<Et>=N,N'-diethyl-3,7-diazanonane-1,9-dithiol)を用いることにした。NiBr_2(EtOH)_4との反応を行ったところ、生成物は三核ニッケル錯体{[Ni(dadt^<Et>)]_2Ni}[NiBr_4]であったが、本錯体に2当量のカリウムベンゼンチオラートを加えると、二核ニッケルチオラート錯体Ni(dadt^<Et>)Ni(SPh)_2が収率90%で得られ、[NiBr_4]^2を対アニオンとするこの三核ニッケル錯体は二核ニッケル錯体合成の良い前駆体となることを見いだした。そこで同様の手法によってニッケル上に中性配位子であるテトラメチルチオ尿素(tmtuと略)を導入し、これを用いたACSモデル反応を検討した。三核ニッケル錯体にtmtu存在下でAgOTfを2当量作用させたところ、2つのブロミドの脱離にともなって2つのtmtuが末端ニッケル上に配位した錯体[Ni(dadt^<Et>)Ni(tmtu)_2]^<2+>が収率56%で得られた。この錯体にTHF中-60℃で1当量のMeLiを加え、引き続き1当量のKSDmpを作用させたところ、ニッケル上にメチル基とSDmp基をあわせ持つ錯体が得られた。本錯体は、結晶構造解析されたACSの二核ニッケルクラスター部位と極めてよく似た構造を有している。またこの錯体にCOを作用させると、ACSモデル反応が進行することもわかった。
すべて 2006
すべて 雑誌論文 (6件)
Angew. Chem., Int. Ed. 45
ページ: 3768-3772
Organometallics 25
ページ: 4835-4845
Inorg. Chem. 45
ページ: 9914-9925
ページ: 3111-3113
ページ: 7988-7990
Int. J. Quantum Chem. 106
ページ: 3288-3302