研究概要 |
本研究では,ナノ配位空間での基本的な特性を把握すべく,錯体の詳細な原子・分子構造には強く拘泥はせずに,現実系の特徴を踏まえつつできるだけ単純なナノ空間系を設定した上で,バルク平衡相状態を把握または設定可能な分子シミュレーション手法により,配位空間内での相挙動の本質を発掘し,その機序・原理の理解とモデル化を図ることに注力する。基本的に初年度には,H17年度から本特定領域公募課題に採択されすでに進めつつある相挙動の現象把握に立ち,そのメカニズム解明とモデル化に取り組んだ。 1.配位空間の超薄壁多孔体としてのモデル設定(宮原・神田) 2次元正方格子型の錯体がスタックした3次元錯体中の1次元チャンネルをモデルとし,その壁を,分子層一層からなる壁のモデルとして適切な10-4型ポテンシャル関数によってモデル化した。吸着質分子には,バルク流体としての相挙動が十分に理解済みのLennard-Jones相互作用を設定した。分子-壁間にいくつかの典型的強度を導入して相挙動を検討した。 2.ナノ配位空間内相挙動の特異性検討とモデル化(宮原) 前項の検討で,相状態の変化が現れる近傍で,設定温度あるいは化学ポテンシャルのわずかな差に対する相状態の応答を検討したところ,強引力壁のチャンネルではバルク相の臨界温度近傍にあたる高温ですら,固体の密度を保持するが,明確な一次転移は発生しない一方,分子と同強度の引力壁では一次転移性が高く,またバルク凝固点よりもやや高温での転移が認められた。 3.吸着測定による凝固・凝縮現象の検討(田中) 典型的なナノ空間材料について吸着等温線を実測すべく,低温吸着測定系の構築に取り組み,次年度には測定開始が可能となった。
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