研究概要 |
配位空間は,通常の多孔体の対極とも言うべき「空間の中に薄い壁or柱が発達した」構造を持ち,また壁の厚みは単原子程度で極めて薄い。本研究では,この配位空間の特異性に着目し,分子シミュレーションによる現象把握と,その機序解明・モデル化を目指すものであり,以下の成果を得た。 1.理論的検討:可動配位空間のモデル設定と構造転移検討 相互貫入したジャングルジム構造を第一の対象に,その柱を,ビピリジンなどの配位子をイメージした「分子柱」としてモデル化した。 相互配置を種々の位置に固定した上でのGCMCシミュレーションにより,各位置についての自由エネルギーの算出を試み,構造転移のメカニズムを,全系の自由エネルギー解析を行うことで明らかとした。すなわち,定圧では相互に中心に位置する無吸着状態が安定である一方,気相圧の増加に伴い柱同士が接して吸着空間を生じさせた状態が徐々に安定化されて第二極小を生じ,さらに高圧では極小値の大小が逆転し,吸着空間を生み出す構造転移を発生し得ること,いわゆるゲート効果が発現することを明らかとした。また,柱の太さ,相互作用強度,単位格子サイズ,吸着分子の大きさ,引力強度などに応じて,自由エネルギプロファイルは多様な変化を示し,これに対応して種々の様式の構造転移とヒステリシスを示し得ることをも明らかとした。 2.実験的検討:ナノ空間吸着挙動とゲート効果の特性把握 典型的なナノ空間材料について吸着等温線を実測し,凝縮および凝固現象の特定もあわせて行った。以上,2年間の検討を総括すれば,本研究成果は,配位錯体への吸着における格子構造転移と低圧吸着ヒステリシスに向けて,独創的理解を与えるものである。
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