近年、太陽エネルギーの有効活用が注目を集めており、高効率有機太陽電池の開発に向けた研究が盛んに行われている。我々は、金ナノ微粒子を土台としてポルフィリンとフラーレンを三次元的にクラスター化させ、そのクラスターをさらに酸化物半導体電極上に組織化させることに成功している。そしてその修飾電極を用いて、色素増感太陽電池とバルクヘテロ接合太陽電池の両特性を併せ持った新規な有機太陽電池の開発に成功している。しかしながら、金ナノ微粒子はポルフィリンの励起状態を失活すること、および高価であることを考慮すると、安価な微粒子上にポルフィリンを組織化することが望まれる。そこで、我々はポルフィリン組織化の土台として、光捕集効果も期待できる半導体微粒子に着目し、ポルフィリンを半導体微粒子上に3次元的に組織化し、さらにフラーレンと共に酸化物半導体電極上に集積化することで、光電変換系を構築することを目指した。ポルフィリンアルカンチオールをCdSeナノ微粒子上に組織化したポルフィリン修飾CdSeナノ微粒子を合成した。合成はヘキサデシルアミンとチオフェノールで被覆されたCdSeナノ微粒子をまず合成し、このアルキルアミンをポルフィリンアルカンチオールと交換することで作製した。ポルフィリン修飾CdSeナノ微粒子ではCdSeにより捕集された光エネルギーはエネルギー移動によりポルフィリンに移動する。このエネルギー効率はCdSeナノ微粒子上のポルフィリン数を増加させると上昇し、ポルフィリン数21個では100%の効率で起こることがわかった。ポルフィリンも光捕集を行うので、両発色団とも紫外・可視光を効率よく捕集できることになる。また、生成したポルフィリンの励起1重項状態はCdSeナノ微粒子によって消光されないこともわかった。従って、適切なアクセプター分子と組み合わせることで光電変換系に展開できることがわかった。
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