京大工・北川グループにより開発された多孔性高分子CPL-1が構成する配位空間2について、その水素吸着性能について量子化学計算を用いて解析を行った。その結果、pyrazinecarbonateの酸素原子に対してend-on構造で分子状吸着した際に、最も大きな吸着エネルギーが得られることが分かった。 Pyrazinemonocarbonate(pzmc)に水素が吸着した際、水素上に電子分布の偏りが確認できた。この効果を活かす配位空間の設計として電荷分極した空間を考えた。理想的な系としてNa+イオンを導入すると、吸着エネルギーは約3倍に増大し7.58kcal/molとなった。同様にbenzenesulfonateにおいても同様の効果が確認された。 この効果を明確にするために諸熊-北浦のエネルギー分割を拡張したRVS法により、水素吸着に寄与する相互作用成分を評価した。pzmcとpzmc-Na+について比較すると、Na+により"Polarization"の成分が増大している。即ち、電荷分極した空間の導入により水素分子の電荷分布の偏りを利用した吸着エネルギーの増加が起きていることが示された電子密度について、孤立した水素分子のものとの差(差電子密度)を比較したところ、Na+の存在下で水素分子の分極が増していた。また、酸素原子からの電子流入が若干生じており、charge transferの寄与が増大していることに対応している。同様の効果はbsとbs-Na+においても確認できた。 また、炭素材料を模したbenzeneやbenzene dimerにおいては、分極効果はほとんど無く、"Dispersion"で示される分散力が主要な相互作用であるが全吸着エネルギーはpzmc-Na+系やbs-Na+系より小さくなり、電荷分極した空間の重要性が理解できる。
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