最近、金属錯体集積体のもつ配位空間を利用した小分子の取り込み、触媒反応、特異的な磁性などが注目されている。配位空間の機能発現は、空間がゲストに与えるストレス、あるいは空間に凝集したゲストがホスト集積体にもたらすストレスが相乗的に作用した結果と考えられる。そこで配位空間をストレス凝集空間(場)として捉え、ストレスを合目的に時空間制御することで新しい集積体の構築を目指す。ストレス空間では、ゲスト分子、ホスト錯体双方に束縛が生じ、双方の運動性の変化、ゲスト分子の特異な配列をもたらし、外場応答性、分子認識能等、特異的な機能発現に至る。また、束縛から生ずる特異的な構造的、電子的変化は、酸化還元特性、スピン状態の変化をもたらすであろう。本研究では、一次元あるいは二次元遷移金属錯体集積体をフレームワークとする低次元性ナノストレス配位空間に焦点をあて、以下の研究を行った。 (1)動的チャンネルの構築:伸縮自在な一次元配位高分子により作られる外場応答性動的チャンネル、molecular muscleの構築。 (2)ストレスを貯蔵する層状化合物の構築:大きな運動性と自由度を有し、ΔSの"貯蔵"が可能な長鎖アルキル鎖を導入した層状化合物の構築。 (3)インターカレーションによるゲスト分子の導入:合成された層状化合物に機能性分子(たとえば、スピンクロスオーバー錯体)をゲストとして導入し、アルキル鎖がもたらすストレスにより誘発される物性変化の検討。
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