イミド架橋Ru_2Pt混合金属3核クラスター{(Cp*Ru)_2(μ_2-CH_2)}(μ_3-NPh)Pt(PMe_3)_2(Cp*=η^5-C_5Me_5)をMeOTf(OTf=OSO_2CF_3)で処理すると、一方のRu上が選択的にメチル化されたカチオン性クラスター[{(Cp*(Me)Ru(μ_2-CH_2)RuCp*}(μ_3-Nph)Pt(PMe_3)_2)]OTf(1)が得られた(85%)。さらに、(1)をトルエン中で50℃に加熱することにより、クラスター上での架橋メチレン配位子のC-H結合切断反応が進行し、Ruに結合していたメチル基のPtへの転位を伴って、3配位カーバイドクラスター[(Cp*Ru)_2(μ_2-NHPh)(μ_2-H)(μ_3-C)PtMe(PMe_3)_2)]OTf(2)がほぼ定量的に生成することを見出した。(1)、(2)の構造の詳細はX線解析により明らかにした。(2)は、3つの金属中心に架橋配位した平面3配位型カーバイド錯体の初めての例である。(2)中の金属-カーバイド炭素間結合距離は1.94〜1.98Aと、カルボニル錯体における金属-カルボニル炭素間結合距離に匹敵する値となっており、3つの低原子価金属中心からカーバイド炭素に対する強いπ逆供与が起こっていることが示唆される。(1)の架橋メチレン部位を13Cでラベルして同様の実験を行ない、(2)のカーバイドが(1)の架橋メチレン由来であることを確認した。また、(1)から(2)が生成する過程を1HNMRで追跡することにより、μ_3-メチリジンクラスター中間体を経由して反応が進行していると考えられることを明らかにした。
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