研究課題
本研究では、高分子表面に形成したランタニド配位化合物のff発光効率が、高分子膜の延伸により増強される現象について、その分子構造的な知見と発光現象と相関させ議論を行ってきた。その結果、高分子にポリビニルアルコールPVAを用いると、光アンテナと配位子との役割を兼ね備えたフェナントロリンは、この高分子と水素結合を介し吸着していることがわかった。さらに、Spring-8 BL01B1の測定も用いることで、これらの間にイオン性および配位性結合を介してユーロピウムイオンが配置した化合物が形成することが明らかになった。また、この化合物は、ff発光を可視領域に示す。偏光発光スペクトルの測定からユーロピウムからのff発光は偏光を伴うことがわかった。このような現象は非常にまれであり、スピンコート法による低濃度の薄膜形成により、ユーロピウム本来のスピン状が偏光性ff発光発現に大きく寄与しているものと考察される。現在のところ、フェナントロリンからユーロピウムへのエネルギー移動効率は、未延伸の場合と比較して延伸により倍程度に向上することがわかっているが、その絶対値は結晶の場合にはるかに及ばず、今後強発光性を促す系を確立することで 光を用いた光デバイス開発へも応用が期待できる成果である。たとえば、偏光ディスプレイや光による情報伝送材料などの原理を大きく変えることができ、省エネルギー、高効率伝送能力を兼ねた材料設計指針につながるものと考えている。
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