研究概要 |
アルキル鎖を4本もつポルフィリンを一方の環として含むセリウムダブルデッカーポルフィリン誘導体をいくつか合成した,これらの分子は固液界面において,基板上に整然と配列することがSTM観察によって明らかとなった.特に我々が注目したのは,分子の回転を直接可視化できる可能性である.特に,化合部1は,基板に配列したときに上側になるポルフィリン環を細長い形にしてあり,基板上での分子の向きがわかるように設計してある.1が連続して並んでいるところでは分子像が楕円形に見え,両脇をフリーベースポルフィリンによって挟まれている1の分子像は丸く見える.このような像の違いは,ダブルデッカーが連続して並んでいるところでは,十分なスペースがなく回転できないが,フリーベースに挟まれた分子は回転できると考えるとうまく説明できる. アルキル鎖をイリジウムトリスフェニルピリジンに導入することによって錯体を基板表面に規則的に配列させ,その構造を明らかにすることに成功した.用いた分子は長鎖アルキル基をフェイシャル位に3本もつ錯体である.このアルキル鎖が基板に吸着することにより安定な2次元配列規則構造を形成する.この分子は固液界面でも固気界面でも同様の配列を形成する.溶媒滴下法によって固気界面に形成するナノメートルスケールの規則構造「ナノスリップ」は,温度でアニールすることにより,規則性がマイクロメートル領域まで広がった「マイクロスリップ」に成長することが明らかになった. 亜鉛ポルフィリンの軸配位は可逆,置換活性であり,このような軸配位子がSTMでどのように観察されるかは,これまで知られていなかった.われわれは,置換活性な場合でも,固液界面において,軸配位子の有無がSTMによって容易に区別できることを見いだした.さらに,アゾベンゼン誘導体の軸配位子を用いて,そのシス体とトランス体の区別が可能であることを明らかにした.
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