研究概要 |
cage型ナノ構造多核金属錯体を合成し、詳細なX線構造解析を行う事により内部空間に複数の分子を取り込むことを見いだした。ESI MSスペクトルから、この錯体がCH_3CN溶液中において12核構造を維持していることが示された。このcage型ナノ構造多核金属錯体の溶液中における安定性を向上させる事を目的として、dpmO配位子に含まれる2つのピリジン環の6位に4-ブテニル基を導入し、その三核銅錯体を合成し、これを用いてGrubbs触媒によるオレフィン閉環メタセシス(RCM : Ring-Closing Metathesis)を行った。この手法を用いることで、溶液中で柔軟かつ安定な構造を持ち、さらに多核金属錯体特有の高い機能性が実現できるのではないかと考えた。初めにM_3L_3型の三核銅錯体を用いてRCMによる構造安定化を試みた。従来の三核化配位子dp^<6-Me>mOHの6位のメチル基を4-ブテニル基に変換した配位子dp^<6-Butene>mOHを合成し、M_3L_3型三核銅(II)錯体を得た。Grubbs触媒を用いてRCMを行い、ESI MSによってM_3L_3型錯体からM_3L_1型錯体への反応の進行を確認した。この手法によって定量的にM_3L_3型錯体をM_3L_1型錯体に変換する事が出来た。さらに、反応生成物を沈殿として容易に単離する事が出来たので、これを濃アンモニア水で処理して銅イオンを除き、metal-freeの配位子を塩化メチレンで抽出した。配位子の構造は^1H NMRスペクトルを初めとする様々なスペクトルデータによって確認した。次に、ベンゼンの1,4-位にdp^<6-Butene>mO配位部位を持つp-ph-bdp^<6-Butene>mOHを合成した。これを用いてM_<12>L_6からなるcage型多核銅(II)錯体の合成を行い、同様の手法による構造の安定化を検討中である。
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