研究課題
[Ru^<III>(trpy)(sq)(NH_3)]^<2+>(trpy=ターピリジン;sq=セミキノン)はアルカリ条件下でメタノールの酸化反応を触媒し、酸性条件下での白金電極上での酸素還元を組み合わせると、均一系触媒でもメタノールの持つ化学(結合)エネルギーを直接、電気エネルギーに変換することが可能であることが明らかになった(燃料電池)。しかしながら、反応の進行とともにNH_3配位子がOCH_3に置換され、全く触媒活性を示さない[Ru^<III>(trpy)(sq)(OCH_3)]^<2+>が生成した。そこで、アミノ基の解離を抑制し、かつアルコール酸化反応の反応活性種を明らかにする目的で、末端にNH_2基を有する4座配位子、2-[ビス(2-ピリジルメチル)アミノメチル]アニリン配位子(NH_2Ph-bpa)を用いて、[Ru^<III>(NHPh-bpa)(sq)]^+を合成した。[Ru^<III>(NHPh-bpa)(sq)]^+は酸性溶液ではアニリド窒素へのプロトン化が起こり[Ru^<III>(NH_2Ph-bpa)(sq)]^<2+>が生成した。一方、[Ru^<III>(NHPh-bpa)(sq)]^+を強塩基で処理すると、g=4と2付近にEPRシグナルを示す3重項Ru^<II>-アミニルラジカル錯体[Ru^<II>(^<-.>NPh-bpa)(sq)]^0が生成したが、窒素上の不対スピンと^<14>N核(I=1)との分裂が見られなかった。そこで、[Ru^<II>(^<-.>NPh-bpa)(sq)]^0を-1.5V(vs.SCE)でセミキノン配位子を電気化学的にカテコールに還元して窒素上にのみ不対スピンが存在する[Ru^<II>(^<-.>NPh-bpa)(cat)]^-を合成し、そのEPRスペクトルを測定したところ、g_1=2.175,g_2=2.105,g_3=1.905の異方性を持ち、g_3成分に窒素核とのsuperfine分裂(AN=8.2mT)を持つシグナルが観測された。以上の結果はRu^<III>(sq)NH_2-R錯体からのプロトン解離で生成するN-ラジカル配位子が炭素-水素結合を開裂させることを強く示唆している。
すべて 2007 2006 その他
すべて 雑誌論文 (6件) 図書 (1件)
Journal of American Chemical Society 129
ページ: 2-3
Bulletin of the Chemical Society of Japan 79
ページ: 1535-1540
ページ: 745-747
Inorganic Chemistry 45
ページ: 8887-8894
ページ: 2873-2885
Angewandte Chemie International Edition (In press)