研究概要 |
平成19年度の研究では、(1)京大タンデムを用いたマイクロTPC性能評価実験のための基礎実験(2)神岡地下実験室でのマイクロTPCの長期安定動作およびバックグラウンド測定を行った。 (1)電気分解法によって製作したTiDターゲットを京大タンデムにて重陽子ビームに照射、ターゲット中の重水素(D)と反応して、中性子とヘリウム3原子核を生成、ヘリウム3原子核をシリコン検出器で検出、中性子をマイクロTPCに照射することを目的としている。重陽子ビームの加速電圧、ターゲットの作成方法を変更しながら合計9度のビーム試験を行い、真空槽外部に設置した中性子検出器との同時計測によって真空槽内部に設置したシリコン検出器でエネルギースペクトルを取得した。この結果、平成18年度に設置した重陽子ビームの減速材(75マイクロメートル厚のアルミニウム)が背景事象の源となることが判明した。減速材を取り除いて2.5メガ電子ボルトに加速した重陽子ビームをターゲットに直射することで、シリコン検出器と中性子検出器の同時計測率が上昇、エネルギーの定まった中性子を用いたマイクロTPC較正への基礎となった。 (2)30cm角マイクロTPCを用いて、神岡地下実験室での長期測定及びバックグラウンド測定をを行った。平成19年1月に神岡地下実験室に装置を設置、月に1,2度のメンテナンスを除いて無人運転を行い、安定したデータ取得を実現した。更に宇宙からの放射線バックグラウンドが低い条件下での観測をおこなったことで、検出器内部のバックグラウンドを調査、得られたエネルギースペクトル、時間変化とシミュレーション結果を合わせることで、検出器構成物質の放射性不純物が現在のバックグラウンドの主であることが判明した。
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