我々がILC用バーテックス検出器に用いようとしている全空乏型高精細画素CCDは標準的なCCDと比較した場合にその放射線耐性に(a)全空乏化に起因する違い、および(b)高精細化に起因する違いがある可能性がある。これらを個別に特定するため、平成18年度においては、標準的なピクセルサイズを持った全空乏型CCDの開発を行なった。開発した全空乏型CCDのサンプルには、エピタキシャル層の厚みが15μmのものと30μmの2種類があり、これらはポテンシャルの形が異なるために信号電荷が転送されるチャンネルの深さ方向の厚みが異なる。その結果、放射線損傷によってトラップが形成された場合、転送される信号電荷が出会うトラップの数が異なり、電荷転送効率に差が出る可能性がある。これらの全空乏型CCDサンプルの放射線耐性試験は当初は平成18年度に行なう予定であったが、CCDの開発が年度末にずれこんでしまったため、平成19年度に行なう予定である。 全空乏型CCDの開発と平行して、平成18年度には有限要素法を用いたCCDの電場計算を行なった。先に述べたように、CCD内部の電場のポテンシャルの形が放射線耐性と密接な関係を持つと予想されるため、CCD内部の電場を理解しておくことは重要である。計算の結果、ポテンシャルの底に形成される電荷転送チャンネルの厚みは、一般的な空乏層の薄いCCDに比べて、エピタキシャル層が15μm厚の場合は約10%、エピタキシャル層が30μm厚の場合は約30%厚くなるという結果が得られた。
|