全空乏型高精細画素CCDは国際リニアコライダー(ILC)における素粒子実験のための測定器システムを構成する検出器要素の一つであるバーテックス検出器のためのセンサーとして有望な候補の一つである。バーテックス検出器はビーム近傍に置かれるため、その放射線耐性は重要であるため、本研究では全空乏型高精細画素CCDの放射線耐性の研究を行った。標準的なCCDに関しては我々は既にILCでの使用において十分高い放射線耐性を持つことを明らかにしたが、全空乏型高精細画素CCDの放射線耐性には、標準的なCCDと比較して、全空乏化に起因する違い、および高精細化に起因する違いがある可能性がある。特に高精細化することによって、信号電荷が転送されるチャンネルと呼ばれる領域のサイズが小さくなり、放射線損傷によって生成されるトラップに信号電荷が出会う割合が減るため、放射線耐性が向上することが期待される。平成19年度においては高精細化に起因する違いを研究するため、(1)標準的なCCDに比べて画素の面積が1/4の全空乏型高精細画素CCDの開発、および(2)その全空乏型高精細画素CCDを読み出すための電子回路の製作を行った。 新たに開発された全空乏型高精細画素CCDは読出し速度、暗電流、S/N比、消費電力等の点において要求性能を満たすものであった。放射線耐性に関しては、開発が年度末近くにずれ込んでしまったために、まだデータ収集中であるが、近日中にデータ収集を完了させ、データの解析を行い、結果が得られる見込みである。
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