平成18年度に行ったヒッグス粒子の二光子状態への崩壊過程を用いた発見に関する基本的な研究に基づき、平成19年度はさらにその過程を利用し、LHC・ATLAS実験により見いだされた粒子が、実際にヒッグス粒子であるかどうかを確認するための研究を主に行った。LHC加速器での実験では新しい物理の発見が期待されるが、実際に新しい物理現象が発見された場合、その現象が、実際にどのような物理に依るものなのか、確かに予想されたヒッグス粒子が発見されたのかどうかを観測を通じて確認できなければならない。 今年度の研究ではトップクォーク随伴反応によるヒッグス粒子の生成と、その二光子状態への崩壊過程をもちい、二光子状態で発見された新粒子が、どのようなスピン・パリティの状態であるのか、CPの固有状態がevenであるのかoddであるのが、生成されたヒッグス粒子の横方向運動量、および擬ラピディティの観測から識別できることが分かった。この様にその性質を決定するには発見からさらに3年ほどのデータの蓄積が必要であるが、新しい物理現象がどのような物理で解釈できるかを決定するためには必要不可欠な課題である。 重いヒッグス粒子がベクターボゾン対に崩壊し、さらに4個のフェルミオンに崩壊する過程についてはいくつか研究があるが、二光子状態で発見される質量領域のヒッグス粒子に関してはこの研究は初めての研究であり、他に類を見ない新しい研究である。
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