研究概要 |
DD/DT燃焼プラズマ中の燃料イオン比(D/T比)計測用の中性子スペクトロメータとしては,エネルギー弁別が比較的容易な二結晶型飛行時間法(TOF)が有力とされているが,実機高出力領域においてはDD/DT中性子発生率が約0.5%と微量であるため,圧倒的に多いDT中性子やγ線がDD中性子検出の妨げとなる.本研究では高出力領域での燃焼D/T比測定に特化した飛行時間中性子スペクトロメータとして,飛行時間を測定する結晶対(プラスチックシンチレータ対)の前に中性子散乱体(水のセル,数cm厚×数cmφ)を挿入し,その散乱体によって散乱された中性子のエネルギーを飛行時間法により測定するシステムを提案した.本システムは(1)ビームライン上にアクティブな検出器を持たないこと,(2)水セル中の水素原子核のDT中性子よりもDD中性子に対して大きな弾性散乱断面積を利用して,シンチレータ対に入射する中性子束のDD/DT中性子強度比を向上させることができること等によって,TOF法のノイズ源の一つである偶然同時計数の抑制が期待できる. 本概念の試作機を作製し,日本原子力研究開発機構核融合中性子源施設FNSの加速器DT中性子源ペンシル孔(20mmφ)を用いて基礎実験を行い,14.1MeV近傍にピークを持つ中性子スペクトルが得られ,モンテカルロシミュレーション結果ともよく一致していることから,本システムが中性子スペグトロメータとして成立することが実証された. 続いてこの加速器DT中性子源のターゲット位置での重水素同士の衝突により,DT中性子ビーム中に混入する微量DD中性子(1%程度)の検出を実証するため,エネルギー分解能を向上させたシステムを新たに作製し,その検出を試みた.その結果DT,DD中性子の両ピークが観測され,本システムによるDT中性子ビーム中の微量DD中性子検出に成功した.またその結果を基に実験に用いた中性子ビームのDD/DT中性子強度比を算出すると0.8±0.3%と評価され,相対誤差が大きいもぁの妥当な結果を得た.
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