研究概要 |
核融合炉第一ミラー材料のプラズマ曝露による光反射率の劣化特性を調べるために,反射率測定装置を,新たに設計および作製した.本装置では,1〜5keVの低エネルギーヘリウムイオン照射下における,ミラー材料の反射率の実時間測定が可能となっている.また,既存の質量分析装置と直結されており,照射下その場ガス放出挙動が測定出来る. 現在までに,鏡面研磨したオーステナイト系ステンレス鋼304および316Lを試料とした実験を行い,以下のような知見が得られている.(1)反射率の劣化挙動には,少なくとも2種類の過程が存在し,低い照射量までは指数関数的に減少し,高照射領域では,線形的に減少する.(2)反射率の減衰は,2×10^<23>He^+/m^2程度の高い照射量まで飽和することなく減衰し続け,室温照射において,反射率は未照射時の30%以下にまで減少する.(3)316L鋼の反射率の減衰は,304鋼と比較して大きい.これらの結果は,照射下その場測定の手法と,各種機器の安定した継続使用が可能な装置系を用いることにより初めて明らかになった事実である.本研究で作成した装置および得られたデータは,ミラー材料の寿命評価等を行う際には非常に有効であると考えられる. また,本研究では,反射率減衰のメカニズムの解明のために,反射率の測定とともに,透過電子顕微鏡を用いた微視的欠陥形成挙動の観察と,EELS測定による光学定数の評価にも取り組んだ.その結果,反射率の指数関数的な減衰と相関のある高密度のバブルを含んだ照射欠陥の形成が観察された。またこれに対応した金属MoのEELS測定からは,光学関数が見積られ,この結果からも,照射によって可視光から紫外光領域にかけて反射係数が減少することが見出され,照射損傷構造に特異な電子励起の存在が示唆された.
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