研究概要 |
レーザー爆縮で生成される高密度の燃料プラズマでは電子のフェルミ縮退が起り得る。電子縮退効果の一つは高エネルギー荷電粒子に対するプラズマの阻止能が古典プラズマを仮定した場合よりも低下することである。このことを利用して爆縮CDプラズマの縮退度が測定されている(阪大)。電子縮退の影響は、爆縮プラズマ中の電子熱伝導、制動放射、α粒子加熱、電子-イオン間の温度緩和等、電子の分布関数が関与する諸過程を介して、点火初期段階のバーンヒストリーにも及ぶことが考えられる。高速点火実証計画FIREX-I〜IIで実現が見込まれる高密度DT燃料プラズマのフェルミ縮退がどの程度になるかは興味のもたれるところであるが、DTプラズマの縮退度の計測法は検討されていなかった。 そこで19年度は、α粒子やノックオンイオンがひき起こすγ線生成核反応を利用して爆縮直後のDT燃料プラズマの縮退度を診断する方法を検討した。基本的な考えは以下のとおりである:^9Beまたは^6Liを少量添加したDT燃料ペレットを高密度に爆縮するが、加熱用レーザーは照射しない。このときDT反応で発生する中性子と2次反応で発生するγ を計測し、その発生率の比から縮退度を診断する。着目したγ線生成核反応は^9Be(α, nγ)^<12>C-(1)と^6Li(t, pγ)^8Li-(2)である。それぞれ4.44 MeV及び0.98MeVの単色ガンマ線を放出する。 一様に圧縮されたコアプラズマを仮定し、α粒子やノックオントリトンが減速中に反応(1)や(2)を起こす確率をプラズマ温度k_BTと縮退度θ≡k_BT/εF(εpはフェルミエネルギー)の関数として計算した。反応確率Pは縮退度θに強く依存すること力粉かった。この確率はγ 生成率とDT中性子発生率の比Y_γ/Y_<DTn>として測定で直接決めることが出来る量である。従って、高密度が保持されている間に発生するγ線とDT中性子が計測され、かつ、他の測定で温度が判れば、P-θ曲線を用いて縮退度の診断が可能である。
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