本研究の目的は、新しいマイクロ波反射計システムを構築し、LHDプラズマに適用し、アルベン固有モードの空間構造を直接計測することである。将来の核燃焼プラズマにおいては、アルファ粒子によって引き起こされるアルベン固有モードなどのMHD不安定性を制御することは非常に重要であることが予想され、アルベン固有モードのプラズマ中における空間構造を知ることは理論モデルとの比較研究を行う上で不可欠なことであると考えられている。従来、アルベン固有モードの空間構造については、トロイダル及びポロイダル方向に多数設置された磁気プローブによる計測とシミュレーションコードを用いた解析が主流となってきたが、大型装置の場合プラズマコア部に局在化したような微少振幅のモードを計測することが困難であることが指摘されており、新しい計測手法としてマイクロ波を用いた反射計測の適用が期待されている。本研究で開発を行っているマイクロ波反射計システムは、プラズマ中の波動の空間分布を計測することを目的としておることから、マイクロ波の周波数を時間的に階段状に変化(ホッピング)させ、反射点の空間スキャンを行えるものの構築を目指している。特に反射信号の位相変化を直接検出することにより、揺動強度の絶対値計測を行うことが目標である。本年度は、システムの性能を確実に把握するための開発試験に重点をおいて行った。位相ノイズ成分の少ない発振器として、シンセサイズドマイクロ波発振器を購入し、これを遠隔で操作するシステムを構築した。また、発振した周波数をプラズマ計測で用いるための周波数帯に4逓倍し周波数をホッピング変化させても安定に発振可能であることを確かめた。これを用いて初期的なシステムを構築し、プラズマからの反射信号が既存のアンテナ光学系を用いて得られるかどうかの試験を行い、中性粒子ビームを高エネルギー粒子と見立てたプラズマ実験においてアルベン固有モードの観測に成功した。これらのことから次年度に向けたシステム構築の方向性を見出すことができた。
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