研究概要 |
これまでの有機合成化学においては、収率の向上、反応の効率性を目的として、種々のルイス酸触媒、あるいはルイス塩基触媒を用いた反応の開発が活発になされてきた。これに対して、既知の反応で触媒を用いることが常識とされてきた有用かつ基幹的反応を、ジメチルスルポキシド(DMSO)の特性を活かして触媒を全く用いずに「無触媒」で進行させることを目的として本研究に着手した。 ヘンリー反応は、カルボニル化合物とニトロアルカンからβ-ニトロアルコールを合成する反応であり、有機合成化学において古くから知られている重要な炭素-炭素結合生成反応の一つである。これまでに、ルイス塩基やルイス酸などを触媒として用いるヘンリー反応が数多く報告されている。そこで、ジメチルスルホキシド(DMSO)の反応剤に対する活性化効果に注目し、ルイス塩基などの触媒を積極的に用いることなくDMSO溶媒中で反応を進行させることができないかと考え、本研究を行った。その結果、DMSO溶媒中、MS 4A存在下、カルボニル化合物に対してニトロメタンを反応させたところ、対応するβ-ニトロアルコールが収率よく得られることを明らかにした。また、DMSOの代わりにDMFを溶媒として用いると収率が大きく低下し、アセトニトリル、塩化メチレン、ヘキサン等の溶媒ではほとんど反応が進行しないこともわかった。ニトロメタン以外に、ニトロエタン、2-ニトロプロパンを用いても同様な反応が進行した。さらに、DMSO溶媒中、α,β-不飽和カルボニル化合物に対してニトロアルカンを反応させたところ、1,4-付加反応が進行して、対応するγ-ニトロカルボニル化合物が収率よく得られることも見出した。
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