研究課題
アニオン性金属酸化物クラスターであるポリオキソメタレートは、原子配列が規定された触媒活性点を有する無機分子触媒である。本研究では、過酸化水素を酸化剤としたオレフィンエポキシ化反応に高い触媒活性を有する、γ-Keggin型構造から2個のタングステン原子が脱落した二原子欠損型タングストケイ酸[γ-SiW_<10>O_<34>(H_2O)_2]^<4->の二量体化により新規ポリオキソメタレート触媒を開発し、その酸化反応および酸塩基触媒活性について検討した。有機溶媒中での脱水縮合による[γ-SiW_<10>O_<34>(H_2O)_2]^<4->の二量体化を行ったところ、反応条件に応じて得られた新規触媒の構造は異なり、酸性条件下ではタングステンに水が配位したS字型構造体[(γ-SiW_<10>O_<32>(H_2O)_2)_2(μ-O)_2]^<4->、何も添加物を加えなかった場合には水配位子を持たない閉環型構造体H_n[(γ-SiW_<10>O_<32>)_2(μ-O)_4]^<(8-n)->が得られた。2種類の新規触媒およびその出発原料である単量体[γ-SiW_<10>O_<34>(H_2O)_2]^<4->について酸化触媒特性を比較したところ、S字型構造体のみがケトン類への酸素添加反応であるBaeyer-Villiger酸化に対して高い触媒活性を示した。さらに炭素-炭素結合形成反応に対する触媒特性を比較した。Mukaiyama aldol, Carbonyl-ene, Diels-Alderの各酸触媒反応に対してはS字型構造体のみが活性を示し、塩基触媒反応であるKnoevenagel反応に対しては閉環型構造体および単量体が触媒活性を示した。以上より同一の構造ユニットからなる無機分子触媒において、分子構造の差異に応じて触媒特性が大きく変化することが明らかとなった。
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