研究概要 |
高度分子変換を実現するには、反応性を支配する因子を知る必要がある。本研究ではわれわれ独自の遷移状態の結合モデルによって反応の鍵となる遷移状態の電子構造を解析し,独自に提案した新しいコンセプト,「ジェミナル結合関与」に基づいて,いわばジェミナル結合関与反応群をデザインしている。今回、炭素-炭素結合反応として最も基本的なものの1つである、アルドール反応におけるE/Z-異性体の反応性を制御する方法を研究した。 モデル反応であるケイ素エノラートとホルムアルデヒドについて、遷移状態の結合モデル解析を行なった。その結果、ケイ素エノラートの末端メチレンのうちZ-位にあるC-H結合の結合間エネルギーは負の値であるのに対してE-位にあるものは正の値を示す。これより、Z-位にあるC-H結合は遷移状態において結合的な相互作用を示すことで安定化に寄与できる。そのため、Z-位により供与性の高いσ結合をもっ置換基を導入した方が、反応性が高まると予測された。 実際、理論計算により種々の置換基を持つ基質について活性化エンタルピーを求め、検証した。その結果、σ軌道エネルギーの上昇と共にZ-位が置換された方の反応性をます結果が得られ、予測を確かめることができた。
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