研究概要 |
1)固定化チオウレア触媒の合成と不斉反応への応用 チオウレア触媒の実用的な利用を目指し、回収と再利用が可能な固定化チオウレア触媒の合成を検討した。種々の固体樹脂や可溶性ポリマーに連結したチオウレア触媒を合成し、既に開発した種々の不斉反応に応用した結果、PEGに結合させたポリマー触媒が最も良い収率、エナンチオ選択性を発現することを明らかにし、実用化に向けての可能性を示すことができた。 2)チオウレア触媒を用いた不斉反応の開発 当研究室で開発した一般塩基と一般酸を兼ね備えた多機能型アミノチオウレア触媒の有用性を探るため本触媒を用いた新しい不斉反応の検討を行い以下の知見を得た。 (1)プロキラルなケトエステル体の不斉ヒドラジノ化反応を検討した結果、触媒としてチオウレア触媒ではなくウレア誘導体を用いて環状ケトエステルとtert-ブチルアゾジカルボン酸エステルの付加反応を行うと90% ee前後の良好なエナンチオ選択性で反応が進行することを明らかにした。また、窒素ム窒素結合の還元的切断により、α,α-二置換アミノ酸の簡便な不斉合成法になりうることを実証した。 (2)β-アミノ酸誘導体の不斉合成の検討を行い、本アミノチオ尿素触媒共存下、N-Bocイミンに対して求核剤としてマロン酸エステルやβ-ケトエステルを反応させると不斉マンニッヒ反応が効率よく進行し、対応する付加体を良好なジアステレオ(dr:54/46-99/1)およびエナンチオ選択性(% ee:56-98)で与えることを見出した。 (3)すでに不飽和カルボン酸誘導体としてN-アシルピロリジノンからなる不飽和イミドを用いると90% eeを超えるエナンチオ選択性でマロノニトリルのマイケル付加反応が進行することを見出しているが、更なる検討の結果、反応基質として2-メトキシベンズイミド誘導体が反応性と立体選択性の点でより優れていることを新たに見出し、求核剤としてもマロノニトリル以外にシアノ酢酸エステルやニトロメタンが良好なエナンチオ選択性でマイケル付加を起こすことを明らかにした。これにより医薬晶や天然物の不斉合成への応用範囲が格段に広げることができた。
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