研究概要 |
効率よくニッケル-カルボニル炭素間に共有結合を形成させることの出来る組み合わせについて検討を行うために種々のη^2-アリールアルデヒドニッケル錯体を合成した。シクロヘキシルポスフィンを配位子として持つ錯体との反応においては、ベンズアルデヒドが配位した錯体との反応においては以前に報告したη^1:η^1一シロキシベンジルタイプの錯体が生成した。一方、ナフトアルデヒドの配位している錯体の場合には1当量のPCy_3の解離を伴いながら芳香環部分もニッケルへの配位に関与したη^3-シロキシベンジルニッケル錯体を与えた。一方、二座配位子であるDPPFを配位子としてもつ錯体をクロロトリメチルシランと反応させたところ期待された錯体は生成しなかったが錯体はゆっくりと消費されてピナコールタイプの化合物が生成してくるのが確認された。化学量論的にはニッケルの一価の錯体が副生してくるはずである。上記の反応において副生してくるニッケルー価の化合物をニッケルゼロ価へと還元することができれば反応は触媒的に進行することが期待される。そこで、種々の還元剤存在下触媒量のNi(cod)_2,DPPFを用いてベンズアルデヒドのピナコール型カップリング反応の触媒反応への展開を検討した。還元剤として金属亜鉛を用いた場合には反応はゆっくりと進行しピナコール型化合物を収率88%で得ることに成功した。この反応は他のアリールアルデヒド類にも適用が可能であった。ベンゼン環に電子供与性の置換基として-OMeを導入した場合にも対応するピナコール誘導体が収率良く得られた。電子暖引基である-CF_3をパラ位に有するベンズアルデヒド用いた際には定量的に反応が進行した。同様に1-ナフトアルデヒド、2-ナフトアルデヒド、どちらを用いても効率よく反応は進行したが収率は後者の方が良好であった。これはカップリングの際にカルボニル周りの立体的嵩高さが反応に影響を及ぼしていると考えている。
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