アデノウイルスと人工ベクター間の遺伝子発現比較を行った結果、同程度の遺伝子発現を示すためには、LipofectAMINE PLUSにおいてはadenovirusと比較して、3桁以上の遺伝子コピー数を必要とすることが明らかとなっている。これまで、両ベクターの細胞内動態を解析した結果、両者の発現効率の大きな差を生み出す要因が、核に移行してから後の効率にあることを明らかとした。そこで本研急では、このような核移行後発現効率がどのようなメカニズムに基づくものであるかを明らかとした。 セントラルドグマの中間産物であるmRNAをリアルタイムRT-PCRによって測定することにより、この7000-8000倍にも及ぶ核移行後発現効率差における転写、翻訳過程の寄与を解析した。この結果、転写効率、翻訳効率はそれぞれ400倍及び20倍、アデノウイルスで高い結果が明らかとなった。一方、解離型DNAのみを検出可能な高感度in situ hybridizationを用い、アデノウイルスとプラスミドDNAをTSA増感システムによって高感度に検出した結果、Adの方がLFNと比較して非常に効率的な染色が得られ、LFNの低い核内解離効率が、核移行後の発現効率の低さの原因となる事が示唆された。さらに、アデノウイルスにおいては、ユークロマチンへの特異的な局在が認められた。このような、核内の局在や解離の違いが、核内転写の違いに寄与することが示唆される。さらに、LipofectAMINE PLUSは、細胞内のmRNAと高い静電的相互作用を有し、これが、LFNにおいて低い翻訳効率をしめす一因であることが示唆された。 また、リアルタイムイメージングに基づいて細胞内動態を評価した結果、遺伝子は非常にすばやく細胞内でアグリケーションを起こすことを見出し、転写移行後の発現効率の低い大きな要因であることが示唆された。
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