細胞内蛋白質の糖化は血糖であるグルコースが、メイラード反応により蛋白質のアミノ基と非酵素的に結合し糖化蛋白質を形成する反応である。本研究では、細胞内蛋白質の糖化をin vivoモニタリングできる分子を開発することを目的に研究を行い、以下の結果を得た。 まずグルコースを特異的に結合する分子を開発した。大腸菌のペリプラズムに存在するグルコース・ガラクトース結合蛋白質(GGBP)はサブμMオーダーでグルコースおよびガラクトースを結合する。グルコースを結合したGGBPの立体構造からC-4位と相互作用する残基であるアスパラギン酸に着目しグルタミン酸に置換した変異体Asp/Gluを作出したところ、グルコースに対するKd値を保ちつつガラクトースに対する結合を示さないことがわかった。一方血糖値は数mM〜20mM程度であるためGGBPのKd値を高くする必要があった。既報ではGGBP Phe16Ala変異体ではグルコースに対するKd値がmMオーダーに上昇することが報告されていることから、Asp/Glu変異とPhe16Ala変異とを組み合わせた二重変異体を作製したところ、グルコースに対する特異性を保ったままKd値を3.6mMに上昇させることに成功した。 次に申請者の所属する研究室で新たに発見し、組換え発現に成功したフルクトシルアミン結合蛋白質(FABP)を改良した。まずIle/Cys変異を導入しCysに環境感受性蛍光色素であるアクリロダン修飾を施し、in vitroでα-フルクトシルアミンを蛍光法でnMオーダーで計測できる分子を開発した。 これらの検討により培養細胞内に導入し、細胞内の糖化蛋白質の時間的空間的消長の計測に応用できる計測用タンパク質分子の基本分子を作出することができた。
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