研究概要 |
[目的]グリコサミノグリカン(GAG)の発生や分化等における生理的意義や疾病との関連は近年多大な興味を集めている。GAG鎖のうち、ヘパリン/ヘパラン硫酸、コンドロイチン硫酸などの硫酸化多糖はそれらの硫酸化の度合いにより生理活性が著しく異なることから、GAG鎖により調節される細胞機能を解析するためには1本のGAG鎖の局所的な硫酸化パターンや、それらの分布を調べることが必要である。本研究ではGAG鎖を1細胞レベルで精密計測するために使用できるプローブの作成を目的に、GAG結合性タンパク質であるアネキシン(ANX)について、糖結合活性の解析、糖結合部位の同定を行った。アネキシンはカルシウム結合タンパク質の一群で、カルシウム依存的にGAGに結合する活性を持つ。アネキシンおよびその構造改変体を遺伝子工学的に作成し、蛍光標識等を行い、プローブ化する。 [結果]GAG結合活性をANX1,2,4,5について固相結合法で調べたところ、ANX1が最も強くGAGに対して結合することが明らかになった。そこでANX1を用いて培養細胞表面に発現されているGAGの検出を試み、条件検討を進めている。また、ANX5、ANX2についてX線結晶構造解析によりすでに報告されている糖結合部位を、ANX1の構造と比較したところ、ANX1はANX5、ANX2とは異なる領域で糖鎖を認識している可能性が示唆された。今後ANX1の部位特異的変異体を作成し、ANX1の糖結合部位を明らかにして行く予定である。
|