胎生期ラット由来の心筋細胞浮遊培養i液に、NK-1抗体結合型磁性微粒子(Dynabeads^<(R)>)を添加し、洞結節・刺激伝導系細胞を標識した。この浮遊培養液を、あらかじめ底面の一部に磁石を置いた多電極付培養皿上に播種して心筋細胞配列のパターニングを行い(パターニング群)、細胞外電位マッピングにより、あらかじめ細胞配列のパターニングを行っていない対照群と比較した。また、新生仔期の心筋細胞をMatriGel^<(R)>内で培養し、8週齢のラット背部皮下組織に移植し、4週間後の生着状態を調べた。細胞外電位マッピングの結果、対照群ではペースメーカ電位の発生部位は一定しなかったが、パターニング群では、磁石上に集簇した磁性微粒子で標識されたNK-1陽性細胞からペースメーカ電位が生じ、その部位から周辺のNK-1陰性細胞(すなわち心房筋・心室筋などの作業心筋細胞)に伝播した。また、ペースメーカ電位の発生頻度も、パターニング群のほうが大きかった。ゲル培養した新生仔ラット由来心筋シートは、in vitroで一塊となって自己拍動を示した。これをラットの背部皮下に移植し、ゲル心筋シートの生着状態を調べたところ、4週間後の観察では、移植部位が自己拍動を示し、ゲル培養心筋シートが機能を維持したまま生着した。また、isoproterenol(βアドレナリン受容体作動薬)の投与により自己拍動レートは増大した。以上の結果は、1)磁性微粒子を用いた細胞配列のパターニングを行うことにより機能的な心筋細胞シートの構築が可能であること、2)ゲル培養による心筋シートの移植は生体に長期間生着し心筋組織としての機能を示す、ことを示唆した。これらの技術を組み合わせることにより機能的再生心筋組織の構築が可能であると考えられる。本研究課題により、以上の成果を得た。
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