研究課題
(1)シリコン基板を利用したプレーナー型パッチクランプ素子の低雑音構造設計指針の確立。シリコン基板は既存の高度なナノ加工技術の利用可能性や電子回路との融合性の良さから、センサー基板として魅力のある材料ではあるが、(欧米の研究者を中心に)一般に雑音特性が悪いと考えられていた。本研究グループでは、絶縁特性が良い事で知られているSOI(Si on Insulator)構造のシリコン基板をもちい、これにさらに酸化膜を形成することで、テフロン並の低雑音基板を実現できることを理論的示し、実際に、グラミシジン/DφPCの系でテフロン基板なみの低雑音で単一イオンチャンネル電流の観測に成功した。(2)TRPV1温度センサーチャンネルによるリガンドゲート型イオンチャンネルバイオセンサの製作。世界にも例の無い、体内(脳内)埋め込みやマイクロ流体回路埋め込みを目指した超小型プレーナー型パッチクランプバイオセンサーの製作を目指して、開発を進めた。この場合、安定性、イオンチャンネルの選択の容易性から、脂質二重膜に再構成するタイプより、チャンネルを発現した生きた細胞を利用する方が実現可能性が高いと判断し、共同研究グループである、富永、柴崎らが発現技術や培養技術を開発した、TRPV1発現HEK293細胞をシリコン基板に集積する方針とした。まづ、上記(1)の成果に基づき、厚さ600μmのSOI基板に直径1μm前後の微細貫通孔を形成する技術を開発した。収束イオンビームによる方法とプラヅマエッチングによる方法の二通りを開発したが、今のところ、収束イオンビーム法のほうがシール抵抗で良好な結果が得られている。ついで、この微細貫通孔にHEK293細胞を設置し、ホールセルモードを形成した後、カプサイシン刺激によるチヤンネル電流の観測に成功した。測定された電流の様子は、カプサイシン刺激TRPV1チャンネル電流の特色を良く表し、デセンシタイゼイション特性を示す。細胞外液、内液は通常のピペットパッチクランプと同様のものを用いた。センサー部は直径30mm高さ20mm程度で、プレーナー型センサーとしてはかなり小さく、将来の小型化に展望が得られた。
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Thin Solid Films (in printing)
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