研究課題
主鎖共役高分子の骨格構造は、高分子材料が示すべき光・電子物性に顕著な影響を与えるため、両者の定量的な相関関係の解明は、実際の共役高分子を有機エレクトロニクス材料として用いる上で極めて重要である。主鎖π共役高分子や主鎖σ共役型の高分子であるポリシランなどは、その共役系電子構造と近紫外分光特性に密接な相関を示し、化学構造に伴う骨格構造(コンフォメーション)の変化を分光分析により比較的容易に推測する事が可能である。そこで本研究では、さまざまな化学構造・置換基パターンを有するポリシランを合成し、その基底状態骨格構造の分析をベースとし、電荷輸送状態にある分子(ラジカルカチオン・アニオン)の直接観察(Transient Absorption Spectroscopy: TAS法)によって電荷付与に伴う共役構造の変化の予測を行った。またこれら過渡種の定量的分析は、系中に存在する電荷担体の正確な"数"を与える。従って生成した電荷担体による系全体の伝導度の変化から、分子鎖に沿った電荷担体の移動度が得ることができる。伝導度の測定には、一般的なDC法に対して、AC法として知られるTime-Resolved Microwave Conductivity法(TRMC法)を用いた。希薄溶液系で本手法を適用した場合、分子鎖それぞれの相関や不純物の影響をほとんど受けない、純粋な系の伝導度変化を見積もる事が可能である。そこで本研究ではこれら手法を複合的に用い、分子鎖コンホメーションに関する定量的な知見の下、高分子鎖の"かたち"や化学構造による分子鎖内移動度の変化から、さまざまな共役高分子の主鎖共役系が本質的に示すべき電荷移動度を明らかにすると同時に、材料が本来有するポテンシャルを迅速に明らかにするシステムの構築を行なった。
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